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2008年夏号(Vol.o38)/02


労働時間管理の留意点

〔 セントラル社労士法人 寺岡 学〕



■労働時間の把握義務
 企業には、従業員の労働日数、労働時間数などを、できるだけ正確にかつ確実に把握し算定する義務があります。
 この義務は労基法108条にその根拠を有すると考えられています。この条文では企業に、事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金の計算の基礎となる事項および賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払いの都度、遅滞なく記入する義務を課しています。
 この厚生労働省令で定める事項とは、労基法施行規則54条により、労働日数、労働時間数、時間外労働時間数、休日労働時間数、深夜労働時間数等とされています。

■労働時間の管理方法
 企業は労働時間を適切に把握するため、何らかの方法で労働時間を管理する必要があります。
 これについて厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために企業が講ずべき措置に関する基準について」(平13.4.6基発339号)という通達を出し、企業の労働時間管理方法を示しています。
 通達では、企業が労働時間を把握する場合の具体的管理方法として、「企業が自ら現認することにより確認する方法」、「タイムカード、ICカード等の客観的な記録に基づき確認する方法」の2つを原則としています。これらの原則的な方法を採用することができない場合は、例外的に条件つきで自己申告制の労働時間管理を認めています。

■各管理方法の留意点
 「自ら現認する」とは、経営者自ら、あるいは労働時間管理を行う者が、直接始業時刻や終業時刻を確認することです。この方法が可能であれば、もちろん他の方法による把握は不要となりますが、毎日、毎回、複数の従業員を限られた人数で直接確認するということは、企業の規模や従業員数によっては不可能となります。
 「タイムカード等による客観的な記録」による管理方法で問題となるのは、タイムカード等に記録された退勤(出勤)時刻と実際の業務の終業(始業)時刻に不一致がある場合です。つまりタイムカード等で算出した時間に、実際には労働に従事していない私用の時間(同僚との談話、トイレ、タバコ等)が含まれている場合などです。
 この場合、企業はタイムカードで算出した時間がすべて実労働時間ではなく、何時から何時までが私用時間であるというような具体的な証明ができなければ、実態は私用時間であったとしても、これも含めて賃金支払いの対象である労働時間とみなされてしまう可能性が高くなります。
 今までの判例でも、反対証明ができない限り、タイムカードは打刻の時刻から労働が開始され、打刻の時刻まで労働していたと推認され、その時間に対して賃金の支払いを命令しています。
 「自己申告制」は、あくまで例外であり、「行わざるを得ない場合」に採用できるとしていますので、上記2つの原則の方法ではなく、自己申告制により行わざるを得ない合理的な理由が説明できなければいけません。
 また、自己申告制の採用には、「従業員への十分な事前説明」、「申告時間が実労働時間と合致しているか否か、定期的または必要に応じた実態調査の実施」、「適正な申告を阻害する要因の排除改善」の措置を講ずることを求められます。
 したがって、自己申告制を採用するためには、制度としての適正さが確保されていることが必要であり、自己申告どおりに賃金を払っていても、それが真の労働時間を反映していないかぎり、企業は賃金不払いの責めを免れません。

■最後に
 どんな管理方法を採用するにしても、結局は、いかに正確に労働時間を把握できるかという問題に帰着します。
 最近、健康面から企業の残業時間の削減対策がかなり重要視されています。この対策を考える上で、やはり大前提にあるのは正確に労働時間が把握できているかどうかであり、それがすべての基本となります。



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