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■年俸制は残業代不要という思い込み
「年俸制の社員は、その社員の成果や業績などを1年という単位で評価して給料の額を決定している。残業代も全てひっくるめて年額いくらで支払っている。だから残業代などは別途支払わなくてもよい。」などと誤解されることがよくあります。
しかし、残念ながら、年俸制だから残業代等を払う必要がないという法令通達は、今のところ存在しません。したがって、年俸制社員においても、実際に時間外労働などをさせた場合には、労働基準法にのっとり、年俸とは別に割増賃金を支払わなければなりません。
■割増賃金の例外的取り扱い
このように、年俸制においても通常の給料と同様の割増賃金の取扱いとなるため、次のような例外的取扱いをすることはできます。
@労働基準法第41条第2号の「監督もしくは管理の地位にある者」
これに該当すると、労働時間の規制が適用除外されます。年俸制は、一般的に管理職又は専門職に就く者が対象となりやすいが、年俸の管理職者・専門職者だから残業代等は不要なのだといった理屈がまかり通りやすいのは、この適用除外条文と年俸制の持つニュアンスによるところが大きいといえます。
この管理監督者とは、経営と一体的な立場にある者をいい、これに該当するかどうかは、名称にとらわれず、その職務と職責、勤務態様、その地位にふさわしい待遇がなされているか否かなど、実態に照らして判断されます。
企業は、課長になれば、もしくは役職に就けば、いわゆる“管理監督者”だから残業代は払わなくていいと拡大解釈する傾向にありますが、本来的には、実態をもっと厳密に判断する必要があるといえます。
ちなみに、管理監督者といえども、深夜業務を行った場合には、深夜割増賃金を支払わなければなりません。
A労働基準法第38条の2〜第38条の4の「みなし労働時間制の適用を受ける者」
これは、事業場外で業務に従事するため労働時間を把握しづらい場合や、専門業務や企画業務に従事するため労働時間の使い方がその者に大幅に委ねられている場合に、一定の労働時間を労働したとみなすものです。ただし、一定の労働時間の中に残業時間などが含まれる場合は、その分を固定の残業代として支払う必要があります。
B時間外労働などの割増賃金を含めて労働契約を締結している場合で通常の労働に対する給料と時間外に相当する給料を明確に区別している場合
時間外に相当する給料を明確に区別することで、上記Aのような形を任意に設定することができます。ただし、労働契約中の時間外労働相当分が、実際の時間外労働割増分に満たない場合は、その差額を支払わなければなりません。
■年俸制の割増賃金算定の注意点
割増賃金算定の際は、@家族手当A通勤手当B別居手当C子女教育手当D住宅手当E臨時に支払われた賃金(慶弔見舞金等)F一ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス等)を除外することができます。
このように、通常、賞与は割増賃金の算定に含めなくていいとなっていますが、年俸制の場合であって、あらかじめ賞与の額が決定しているものに関しては賞与とみなされず、割増賃金の算定に含めなければなりません。たとえば、年俸額を600万円と決定し、このうち40万円を毎月の給料として支給し、夏期賞与と冬期賞与をそれぞれ60万円ずつ支給するとした場合、割増賃金の算定基礎は、月額の40万円ではなく、賞与を含めた600万円÷12ヶ月=50万円としなければいけません。
これに対して、年俸額を480万円と決定し、40万円を毎月支払うこととした場合で、賞与の額は、業績や評価を勘案して、夏期賞与・冬期賞与の支給時に、その都度決定するとした場合は、割増賃金の算定から除外されます。
年俸制においては、この点を注意して割増賃金を算定する必要があります。
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