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2007年秋号(Vol.o35)/02


最低賃金の捉え方

〔 セントラル社労士法人 西垣 太志〕



■最低賃金の動き               
労働者の賃金最低水準を決定する最低賃金は、労働者の生計費、類似の労働者の賃金および通常の事業の賃金支払い能力を考慮して、中央最低賃金審議会が最低賃金額の目安金額を提示します。それを参考に地方最低賃金審議会が地域別最低賃金と産業別最低賃金を審議し、都道府県労働局長がその審議の答申及び決定し、毎年10月下旬頃に改定します。
しかし、今年は最近の景気回復による産業構造の変化、就業形態の変化による賃金格差の拡大が進み、給料が安すぎて生活できない「ワーキング・プア」の増加防止及び最低賃金と生活保護の整合性を図るために、内閣府は中央最低賃金審議会に「従来の考え方の単なる延長線上ではない引き上げ」を求めました。
この結果、全国平均14円(愛知県20円、岐阜県10円、三重県14円)の大幅な引き上げが、10月25日から実施されることになりました。

■最低賃金法とは
最低賃金法は、労働契約で最低賃金を下回る賃金を定めても、その労働契約の部分は無効となり最低賃金が直接的に適用されるという法律です。
仮に最低賃金より低い賃金を労働者、使用者双方の合意の上で定めても、この法律により、最低賃金額と同様の定めをしたものとされます。最低賃金未満の賃金しか支払わなかった場合には、最低賃金額との差額を支払わなくてはなりません。

■最低賃金の対象範囲とは
最低賃金は賃金の総額に対して定めているものではなく、基本給と諸手当(精皆勤手当、通勤手当、家族手当を除く)を対象としており、臨時に支払われる賃金、1ヶ月を超えて支払われる賃金(賞与など)、時間外手当、休日手当、深夜手当に対して支払われる手当は、最低賃金の対象から除外されています。
実際の賃金が最低賃金以上となっているかどうかを調べるには、最低賃金の対象となる賃金額と適用される最低賃金額を次の方法で比較します。

(1)時間給の場合
 時間給≧最低賃金額(時間額)
(2)日給の場合
 日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金(時間額)
(3)(1)、(2)以外(週給、月給等)の場合
 賃金額を時間当たりの金額に換算し、最低賃金(時間額)と比較します。
※ただし、日額が定められている産業別最低賃金が適用される場合には、賃金額と最低賃金額の日額を時間当たりの金額に換算して比較をします。
精神または身体の障害により著しく労働能力の低い者、試用期間中の者、認定職業訓練中の者、所定労働時間が特に短い者、軽易な業務に従事する者、断続的労働に従事する者など、一般の労働者と労働能力などが異なるために最低賃金を一律に適用するとかえって雇用機会を狭める可能性がある場合は、使用者が都道府県労働局長の許可を受けることを条件として個別に最低賃金の適用除外が認められています。

■最低賃金額の本質
最低賃金法は、日本国憲法第25条第1項「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」及び第2項「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」(生存権)の主旨に基づき、定められています。
そのため、最低賃金制度の目的は、全ての労働者を守るための安全網としての役割がもっとも重要であり、公正な賃金設定という役割は、あくまで補助的なものです。しかし、最低賃金額が生活保護の支給額を下回る地域があるため、厚生労働省は最低賃金額を決める基準の一つに「生活保護との整合性」を盛り込み、労働者の働く意欲を高めることも検討しています。
この度の大幅な最低賃金引き上げを行なっても、生活保護を下回る最低賃金額を定めている都道府県は依然残っているため、「生活保護との整合性」の観点から今後も最低賃金の大幅改定が予想されます。



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