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2006年秋号(Vol.o31)/02


コンプライアンスの本質

〔 セントラル社労士法人 西垣 太志 〕



■「コンプライアンス」の意味               
 最近、「コンプライアンス」という用語がテレビや新聞でよく見かけられますが、その理由としては、国内外を問わず大企業を中心とした不祥事が相次いで起こったことから、この用語がクローズアップされるようになりました。
 そもそも「コンプライアンス」とは、1960年代に米国で独禁法違反、株式のインサイダー取引事件などが発生した際に用いられた法務関連の用語であり、「法令遵守」と訳されましたが、compliance本来の意味は「(命令や要求に)応じること」「願いを受けいれること」であるため、現在は法律、社会通念、倫理や道徳に誠実に対応していく自律的な取り組みとして解釈されています。

■「コンプライアンス」の捉え方      
 「コンプライアンス」の基本的な考え方は、企業活動として何が許され、何を守らなければならないかです。
 「コンプライアンス」の捉え方を間違えて起きた企業の不祥事が最近大きく報じられていますが、「コンプライアンス」を考える際に誤解を生み出しやすいのは、法令を守ると企業活動が制約され、利益追求ができなくなるという逆の考え方からです。
 「コンプライアンス」を守れば、その範囲で企業の活動を自由に行い、より大きな利益を生み出すことにつながるとの考え方が、これからの企業には必要です。

■「コンプライアンス」が守れない問題点               
 企業が「コンプライアンス」を守るためには、個人の資質を高めることも必要ですが、それ以上に組織体質をよくすることが最重要課題となります。なぜなら、個人が正しい行動をしても簡単に組織の風土によって歪められてしまうからです。個人の正しい行動が認められなくなると、悪しき組織体質のきっかけを作り、不祥事の温床を生み出してしまいます。
 悪しき組織風土とは「コミュニケーションが少ない」ことに加えて、日常的なコミュニケーションでは良いことだけを報告し、良くないことは報告しないなどの「コミュニケーションの悪さ」や、“自分さえよければいい”“自分に影響がないことに関心がある”など「自分以外に関する無関心さ」、またどこに責任があるのか、だれが責任を負っているのかがわからないという「責任所在の曖昧さ」、自分にしっかりとした意見がなく他人の意見に同調する雰囲気が蔓延している「付和雷同の雰囲気」、マネジメント機能が働いていないことからの「管理体制の甘さ」などが挙げられます。

■企業は何をするべきなのか       
 「コンプライアンス」を確立させるためには、企業のトップを含めた役員の意識改革から始まり、「コンプライアンス・マニュアル」を策定し、不祥事が起こった場合の対応や改善策を定めることが求められます。このマニュアルは、法律や規則の変更と環境の変化に合わせて常に改訂し、時代に合わせた内容であることが必要です。
 しかし、最も大切なのは、マニュアルを作ることではなく、こうした全社的な取り組みを形骸化せず、一人ひとりの意識にコンプライアンスの精神や倫理を根づかせ、活かされるようにすることです。ある状況に向かい合ったとき、役員や社員が“他社でもやっているから”あるいは“売上をのばすため”“会社を守るため”などの理由で、法律や規則を簡単に破るようでは、何の意味もないからです。
 企業を社会の中の「倫理主体」として位置づけ、それにふさわしい存在として、企業のあり方を模索し、実現していくことが求められています。
 これらのことから、「コンプライアンス」の本質は、法令遵守ではなく、組織体質の改善であるといえます。つまり、法律を知っているだけでなく、企業全体で法令遵守のための組織的な体制作りが必要です。法令に違反する行為が確認できたら、自律的に自浄作用の働く組織でなければなりません。
 企業存続はもちろんのこと、将来の企業業績の向上への第一歩ととらえて取り組む大きな課題です。



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