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■パート社員の待遇
パート社員(1週間の所定労働時間が正社員よりも短い者)は、04年度に初めて一千万人を上回り、就業者に占める比率も25%を突破しました。労働時間が正社員の4分の3に満たないと社会保険に加入する義務が生じない等、企業側にとっては雇用コストを抑えながら労働力を確保することができ、また働く側にとっても雇用条件が柔軟なため時間の調整が容易という利点があり、この雇用形態が促進したものと思われます。
では、良いことばかりで今後何も対策を要せず、このままパート社員を雇用し続けていけるのでしょうか。
■パート社員の賃金格差
前述の通りパート社員とは、1週間の所定労働時間が正社員よりも短い者を指します。ところが、労働時間や業務内容が正社員と何ら変わらないパート社員もいます。このパート社員のことを「常用パート(擬似パート)」といいます。これらの常用パートの賃金についてパート労働法では、「通常の労働者との均衡を考慮すべき」として基本的には正社員と同じか、正社員に準じて決められるべきとしていますが、努力義務に過ぎず、強行規定ではありません。従って労働時間も業務内容も同じパート社員と正社員との賃金格差は直ちに違法としないことになります。しかし、平成8年にパート社員と正社員との賃金格差を民法90条「公序良俗違反」(法律では禁止されていないが社会的妥当性を欠く行為)とした「丸子警報器事件」(長野地方裁判上田支部)の判例が出ました。この判決は、「労働時間、業務内容が正社員と変わらないパート社員の賃金が比較対象となる正社員の賃金の8割を下回る場合は、公序良俗に反して違法である」としたもので、正社員の賃金の8割とパート社員28名が受けていた賃金の差額を、不法行為の損害賠償として、使用者に対し支払命令を出したものです。言い換えれば、2割以内の賃金格差は使用者の適法な裁量の範囲内ということを明確にしたことになります。
かつて昭和41年に女性の結婚退職制を憲法14条(国民は平等であり、差別されない)の趣旨と民法の公序良俗に反して無効とした判決から、男女雇用機会均等法が施行されるまで20年かかりました。パート社員の賃金差別を禁止する立法も丸子警報器事件から20年かかるのでしょうか。判決から10年経った今、パート社員を取り巻く法律の改正、立法が注目されています。
■パート社員を取り巻く法改正
社会保険の強制加入は、現在、正社員の労働時間の4分の3以上働くパート社員に加入義務がありますが、この要件を2分の1とするパート社員への加入拡大案が国会で審議されました。04年、産業界の猛反対により一旦見送られた形になりましたが、この見送りは廃案となった訳ではなく、見方を変えれば予告準備期間を設けた形にすぎません。この問題は08年以降に議論が再燃されそうです。
また、新しい動きとして、厚生労働省は、パート社員が事前の契約より長く働いた場合、法定労働時間以内(1日8時間、週40時間)でも所定労働時間を超えた部分を残業と位置づけて割増賃金の支払を義務付ける制度の検討に入りました。現在、労働基準法は週40時間(1日8時間)の法定労働時間を超えると25%から50%の割増賃金を支払うことを義務付けていることはご周知の通りです。パート社員に対しても、法定労働時間を超えない限り割増賃金を支払う必要はありませが、検討案では所定労働時間が4時間の契約のパート社員が8時間働いた場合、超過した4時間分の割増賃金の支払義務が発生します。割増率については、現在の下限である25%より低く設定する方向で5%から10%で調整される見通しです。この法案は本年すでに学識経験者等からなる審議会で議論が始まっており、07年の通常国会に新法案を提出し、08年からの導入を目指しています。
このように、パート社員を取り巻く雇用環境は激変しつつあり、法改正よってパート社員の労務管理が複雑になることが予測される中、企業は新たなパート社員の活用法を考えていかなくてはなりません。
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