|
■評価の公平性
「一人の上司の評価だけでは、その上司の主観が強く出過ぎてしまう。そのため、フィードバックもしにくく、結果的に動機付けが弱いものになってしまう」というのが、人事評価を運用した結果の一般的な意見といえます。そこで、「公平で皆なが納得できる評価制度」はないかと考えます。
では、「評価の公平性」とはいったいどのようなものなのでしょうか。
■平等評価制度とは
皆なが平等に全員を評価する平等評価制度というものがあります。一人の人が評価すると、その人の主観が強く出過ぎますが、皆なが評価すれば、主観が集まり公平性が出てくるという考え方に基づくものです。
この制度では、同僚や部下からも、場合によっては取引先にも評価してもらうことがあります。より多くの人が評価すれば、評価される人は周囲からそのような「見え方」をしているので、より反論もしにくく、結果的により公平性が出てくるというものです。
■人事部長の落とし穴
ある会社の例。A社では人事部長の提案で、1年前から平等評価制度を取り入れ、今回、初めて評価結果が出ました。B社長は、その結果を見て、おおむね妥当だが、営業のC課長の評価が悪すぎるように思いました。なぜなら、日頃厳しくテキパキと部下に指示を出し、業績も上げていたからです。
社長の立場から見えている姿と違い、もしかして、C課長は部下と相性が良くないかもしれないと考えました。そこで、A社長はC課長を人事異動し、後任にD課長を配置することにしました。
1年が経ち、評価の時期が訪れました。C課長と違い、D課長の評価結果は高いものでした。その後の評価も相変わらず高い評価結果が出てきました。
人事部長から「D課長を部長にすれば業績が上がると思われます」という意見がB社長に届きました。B社長は「D課長になってから業績のほうはどうか。」と人事部長に聞いたところ、「業績は今の方が落ち込み気味ですが、評価は今の方がいいです。」との返答。
人事部長は、人事部の長という立場や自分が提案した手前もあり、この制度に基づく「評価」を絶対視し、落とし穴にはまりました。
制度を採用した途端、もうそれは既定の前提条件として走り出してしまいがちです。「制度」は絶対、「評価」は絶対と決めつけ、制度の「公平性」を検証する謙虚さを人事部長は失ってしまいました。
■平等評価の落とし穴
なぜD課長は評価が高いのに、業績は下降してしまったのでしょうか。
D課長は、「営業に細かなチェックをいれない」「受注が上がらなくても、厳しくその原因を分析・追求しない」など、部下に成果が出なくても「思いやりのある」「物分りのよい」態度で接し、仲良しクラブのような関係を形成していました。C課長と正反対でした。
厳しさのない仲良しクラブでは部下は育たず、当然業績も上がりません。しかし、部下は「今のままでいい」と思い込み、そんな上司に高い評価をしてしまいます。これが「平等」の顛末でした。
■公平性の本当の意味
公平性は、「平等」の中に求めるものでなく、魂を込めて会社が創り出すものです。会社が理念・信念・思想・戦略(以下「理念等」という)に基づき評価基準を作り、社員に説得すべき類のものです。理念等のない評価は、「平等」に引きずられ、秩序のない、方向性と力を持たない風土を産み出してしまいます。
主観は、それが評価の理念等を理解した主観でない限り、いくら多く集まっても、公平性には近づきません。そればかりか、逆に公平性を損なう危険性があります。
理念等を持った社長は、人事部長や平等評価の落とし穴が見えます。理念等を持たない社長は、人事部長の言葉や平等評価の結果を盲目的に採用します。中途半端に理念等を持った社長は、何も判断できずに立ち止まってしまいます。
さあ、あなたはどのタイプの社長でしょうか。
|