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平成18年4月 改正高年齢雇用安定法施行
 高年齢雇用安定法の改正(以下「改正法」)をうけ、2006年(平成18年)4月から段階的に65歳まで、次のうちいずれかの雇用確保措置を取らねばならなくなりました。

@定年延長
A継続雇用制度(現に雇用している高年齢者が希望するときはその高年齢者を
                                 定年後も引き続き雇用する制度)
B定年制の廃止

定年年齢の引き上げスケジュールは次の通りです。

期     間
定  年
平成18年4月〜平成19年3月
62歳以上
平成19年4月〜平成22年3月
63歳以上
平成22年4月〜平成25年3月
64歳以上
   平成25年4月〜
65歳以上

注)継続雇用制度を設ける場合には、労使協定で継続雇用制の対象となる労働者に関する基準を定めたときは当該基準に該当する労働者のみを対照とすることができるものとなっています。
 さらに激変緩和措置として平成18年度から3年間(中小企業は5年間)は協定締結のための協議が整わないときは就業規則の定めによって対象者の基準を定めることができます。

  厚生労働省【改正法Q&A】

 米国のように簡単にレイオフ(一時解雇)することのできない日本企業にとって、定年制度は極めて有効な雇用調整の手段となることを考えると、これらのうち、おそらく最も多く採用されるのは、今までの人事制度に最も馴染みやすい「継続雇用制度」です。但し、「継続雇用制度」には「勤務延長制度」と「定年後再雇用制度」があり、前者は、定年延長や定年制の廃止と同じく、基本的に60歳までの労働契約を60歳以降も引き継ぐものです。定年制度による雇用調整機能を維持するには、定年でそれまでの労働契約をいったん終了し、改めて再契約する「定年後再雇用制度」がベストな選択といえます。

 少子高齢化時代を突き進む日本では、高年齢者の活用というテーマは、企業として今後継続的かつ積極的に取り組んでいかねばならない課題ではありますが、当面、今回の法改正をクリアしつつ、いかに企業に負担が生じないかたちで「定年後再雇用制度」を導入し、高年齢者を上手に再雇用していけばいいかを具体的に解説します。

 改正法の「継続雇用制度」を導入した場合、労使協定(経過措置期間は就業規則等も可)で基準を設定すれば、それに基づき対象者を選別することができます。定年後の再雇用が成立に至るには、この労使協定等で設定した基準(集団的合意による有資格者の範囲設定)のクリア(=再雇用契約締結の資格取得)と、再雇用契約自体の締結(個別的合意による労働条件の決定)の両者を満たさなければいけません。

 前者は改正法に規定されていますが、後者はなんら規定はなく、高年齢者の安定した雇用を確保するという法の趣旨を踏まえたものであれば、最低賃金法などに抵触しない範囲で、当事者双方で労働時間、賃金、処遇などを決めることができます。(厚生労働省作成『改正高年齢者雇用安定法Q&A』)

 従って、基準による選別は、ある意味、客観的に粛々と進めていけばよいことですが、その後の個別的合意形成の際に、それぞれが納得のいく着地点を見出す作業が難航するおそれがあります。しかし、反面、その部分の具体的かつ説得力のある制度作りこそ、信頼関係のもとで高年齢者を上手に雇えるかどうかを大きく左右するといえます。

 定年後再雇用制度を定着させるためには、いくつかのポイントを抑える必要があります。

(1)基準の設定
 平成17年度までは、企業が再雇用の選択権を100%有していましたが、法改正後は基準による選別しかできなくなります。従って、まず、どのような基準を設けるかが非常に重要となります。
 高年齢になると、健康面は当然、それ以外にも意欲、体力、能力などで個人差が顕著になります。従って、全員一律、同条件で再雇用することは妥当でなく、また、再雇用したとしても、その後も加齢により、年々体力面等が急激に衰えていくことが予想されます。業種・職種によっては厳しい基準作りが必要となります。同じ理由で、再雇用の契約期間は原則一年の単年契約とし、一年ごとに設定基準をクリアしているかどうかを確認します。契約を更新するにしろ、その内容を見直す慎重さが制度として要求されます。
 なお、契約更新時に設定基準を下回り、更新に至らなかった場合は、「解雇」でなく「契約期間満了」として扱われるということです。

(2)再雇用コースの設定
 高年齢者それぞれの能力や体力の個人差を考慮し、また企業側のその時々の雇用ニーズに対応するため、パートタイム勤務や隔日勤務といった双方に負担のかからない勤務形態を整備し、選択させる方法もあります。この場合、一定の条件を満たせば社会保険の適用対象外となるため、その分企業側の人件費負担が減るというメリットを有効的に活用することもできます。
 基準合格者で、再雇用を希望する者は、次のコースのいずれかを選択できるようにします。

@専門(スペシャリスト)職
 原則として定年時の役職・等級ランクが部長相当以上の者
A専任(エキスパート)職
 原則として定年時の役職・等級ランクが課長・係長相当以上の者
B一般職
 原則として定年時の役職・等級を問わない
Cパートタイム職
 原則として定年時の役職・等級を問わない

 事務系ホワイトカラー及び管理職は、関連会社等がある場合は転籍または出向という方法もありますが、職種上相対的に突出した専門能力が身につきにくいため、再雇用後の職場がかなり限定されてしまうことが、今後の課題として残ります。

(3)年収水準の設定
 専門職コースは月給制で年間350万円、専任職コースは月給制で年間270万円、一般職コースは月給制で年間200万円、パートタイム職コースは時給制で1時間1000円とします。これは、年金と、ハローワークから本人に支払われる高年齢雇用継続給付を合わせて、年収ベースで定年前のおよそ六割程度を目標に設定してありますが、年収水準に関しては、各社の事情が大幅に異なりますので、適宜調整して下さい。

(4)社員教育・能力開発
 企業は、60歳以降も従業員を再雇用できるよう、入社時から目標設定し、継続的かつ計画的に社員教育を実施し、専門能力の開発を行います。このとき、「いつまでに、何を、どのレベルまで」といった能力の納期管理を徹底することが必要です。
 従業員の方も、60歳以降も就労し続けるには、各人がそれぞれ自分のそれまでの知識や経験をベースとしながらも、社会の変化を見据え、将来必要とされる能力や技術などを想定して、「再雇用されうる専門能力」を入社時から意識的に身に着けていかねばなりません。
 また、今後は一般的な管理能力よりも、専門能力を求められるようになってきます。従って、管理職になっても、マネジメントのみでなく、プレーイングマネジャーとして専門性のある実務能力に磨きをかける必要があります。

(5)職場環境の整備
 高齢になっても仕事ができるように、作業内容の見直しや仕事の開発が必要となります。安全上の問題もさることながら、体力の低下した高年齢者でも業務遂行が可能なように、作業設備の充実を図っていくことが企業側に求められます。

(6)キャリアデザイン面談
 40歳以上の従業員を対象に、今後及び60歳以降についての仕事に対する考えや希望を聞き、また、企業側の考えを伝えます。
 55歳からは、本人のよりいっそう具体的な意思や会社のその時の雇用ニーズ、そして再雇用コースの決定について時間を掛けて話し合います。60歳になった時点では双方が納得のいく状態にしておくことが、個別的合意という着地点を合理的に見出すためには非常に重要となります。
 雇用調整を進める企業では、早期退職優遇制度が50歳代を対象に導入されていますが、40歳代といった思い切った早い段階からこの制度の行使権を与えることも、組織の活性化や効率化に寄与します。

(7)定年までの賃金・人事
 再雇用後の賃金は、定年時の賃金とある程度は連動したかたちで決定する必要があります。定年までの賃金制度が年功色の強いもので高水準にある場合、再雇用後の賃金に高年齢者の体力や能力を反映させるには大幅な減額を余儀なくされます。こうなると、合理的な着地点が見出せなくなる可能性があります。
昨今は、企業の賃金体系が、従来の年功制から職務・成果に見合った制度に移行しつつあるなか、できるだけ再雇用者の賃金制度も職務や成果に見合った賃金にしていく必要があります。特に、加齢による体力等の減退が早いことを考えると、賃金等の労働条件もそれに伴って見直す必要があります。
 従って、60歳までの現行の賃金制度に年功色が色濃く残っている場合は、賃金制度全体を抜本的に見直さねばなりません。
 年功的賃金以外では、年功的処遇制度(昇進昇格)があります。これは、勤続年数の長い年長者を自動的に管理監督者にするというもので、いったん昇進昇格してしまうと、いつまでもそのポストにい続け、人事の停滞や人件費の浪費を招くことになります。管理監督者には役職任期制や役職定年制を導入し、任期のうちに適性を発揮できない場合は、再び一担当者に戻るなり、専任または専門職にスライドするなどして、人事の停滞及び人件費の高騰化を防止し、賃金の適正水準化を図る必要があります。60歳という定年や役職定年を待たずに、このような柔軟性のある人事を行い、そのなかで、意欲の減退が起きない組織運営を模索することが必要です。

 最後になりましたが、「定年後再雇用制度」を効果的に運用するには、結局のところ60歳までの賃金・人事制度が全体として有機的に運用されているかどうかにかかってくるといえます。

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