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有期雇用契約で失敗しないために
 平成16年1月1日より施行された改正労働基準法の中に、前々回にお話しした解雇ルールの改正ともうひとつ、有期契約についても改正がありました。この改正は、雇用形態の多様化が進んでいることから、「労働者が主体的に多様な働き方を選択できる可能性を拡大するとともに、働き方に応じた適正な労働条件を確保し、紛争の防止や解決にも資するよう、労働契約や労働時間などの働き方に係るルールの見直しを行うためのもの」とされ、有期雇用契約が労使(労働者と使用者)双方にとって安定した雇用形態として活用されるよう、有期雇用契約期間の上限を見直したものです。
 改正内容は、有期雇用契約期間の上限が現行の1年から3年に、専門的な知識・技術等を有する者および満60歳以上の者については、現行の3年から5年に延長されました。なお、更新・雇止めに際して発生するトラブルを防止し、解決するために、平成12年に当時の労働省から指針が示されていましたが、厚生労働省は、今回の法改正で、過去の裁判例等を考慮しつつ、根拠規定として内容を整備し、有期契約の締結及び更新・雇止めに関する基準を告示しました。
 現実には、後述の専門的な知識・技術等を有する者との契約よりは、アルバイト・パートタイムに対する有期雇用契約に対しての契約締結及び更新・雇止めに関して、解雇との関係を踏まえながら実際の運用と管理を再度見直し、確認していく必要があります。

■有期雇用契約の雇止めに関する裁判例の傾向
 契約に期間の定めを設けた場合、それは契約の存続期間ですから、期間が満了すれば契約関係が終了するのが原則です。従って、契約関係を終了させるための合理的な理由や相当性は不要のはずです。
 ところが、有期雇用契約について、期間満了で更新しないとした場合(これを「雇止め」と言います)、解雇権濫用法理が類推適用されるなどして、雇用関係の終了が認められないことがままあります。
 裁判例において、雇用関係の終了を認めない理由付けとしては、解雇権濫用法理を類推適用し、解雇と同様に客観的合理的理由と社会的相当性を要求することが多く「更新拒絶権の濫用」と同時に照らし合せた場合、更新回数だけが問題とされるのでなく、契約の実態を見て、さまざまな判断要素を統合して雇止めに解雇権濫用法理の類推適用があるかどうかが判断されます。
 解雇権濫用法理の類推適用の有無を判断するに際しては、基本的に以下にまとめた6項目に着目し、更に当該契約関係の実態を評価するとしています。
@業務の客観的内容  
業務内容についての正社員との同一性の有無
A契約上の地位の性格
 パート、アルバイト、嘱託、非常勤講師等の臨時性、労働条件についての正社員との同一性の有無
B当事者の主観的態様
 更新・継続雇用の見込みについて雇用主からの説明等
C更新の手続・実態
 反復更新の有無、回数、方法、手続きの厳格性等
D他の労働者の更新状況
 同様の地位にある他の労働者の雇止めの有無
Eその他
 有期契約を締結した経緯、勤続年数、等上限の設定

■トラブル防止の留意点
 雇止めをめぐるトラブルを未然に防ぐことを目的とした平成12年の指針では、以下のことを努力義務としています。
@有期雇用契約の締結に際して、契約の更新の有無及び、その考え方並びに更新及び雇止めを行う場合の基準を労働者に対し説明すること。A期間を労働基準法の範囲内でできるだけ長期間にすること。B雇止めをする場合には少なくとも30日前に予告をすること。C雇止めの理由を説明すること。
今回の改正により定められた「有期雇用契約の締結、更新及び雇止めに関する基準を定める告示」は、この指針を受けて厚生労働省より出されたもので、トラブル回避のためには、この告示の遵守が重要です。
 その上で、契約書・雇入通知書に期間を明記することが必要となり、次に、厳格な更新手続きをとる必要があります。形式的にきちんと書面作成・捺印していれば良いということではなく、期間満了前に実質的に更新の有無を検討し、面談をして本人の意思を確認する手続きを行うことが必要です。
 また、期間の定めのない契約と実質的に同じと認定されないよう、正社員と区別された募集採用手続き、教育研修、担当業務、就業規則その他の処遇、異なる労働時間といった点に留意すべきです。
さらに、採用時の説明や約束等が決め手となって、雇用継続の合理的期待があるとされた裁判例も多く、不用意な発言をしないようにする必要があります。もっとも、あまり厳しいことを言って、雇用が不安定という面を強調したのでは、良い人に来てもらえないというおそれもあり、実務的には難しいところです。
その他、雇止めの前例があるかという点も重要となりますので、勤務態度等に不満がありつつ、漫然と更新を継続するような雇用管理は改めるべきだと言えるでしょう。

〔平成16年の当社発行『経営人事レポート』の記事より掲載〕
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