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執行役員制度の積極的活用
 現在、経営をめぐる環境には極めて厳しいものがあります。お客様である消費者や取引先のニーズは、年々高まり、また多様化の傾向を強めており、その対応が難しくなっています。それに加えて、規制緩和や国際化の動きが加速度をつけて進んでおり、企業間の競争はますます厳しくなっています。
 このような流れの中で、企業が確実に成長発展していくためには、最高の経営意思決定機関である取締役会を活性化させ、かつ意思決定自体のスピードアップを図る必要があります。こうした問題意識に基づいて制度化を積極的に試みられているのが「執行役員制度」です。
 執行役員制度は、経営全体の方針と計画を議論し、かつ、経営全体を管理監督する者(すなわち取締役)から、一定の事業や部門の業務を責任をもって執行する者(すなわち執行役員)を分離することにより、経営の効率化、取締役会の機能強化等を図ろうとするものです。
 取締役で構成される取締役会は、会社全体の経営方針の決定と監督機能に限定し、個々の事業や業務の執行機能は執行役員が担当します。執行役員は取締役会から選任され、○○事業部といった個々の事業や、営業部、経理部、人事部といった個々の部門の業務を執行する責任と役割を担います。
 執行役員は、業務執行を担う者の中で最高責任者となるので、課長や部長といった、いわゆる中間に位置する管理者とはそもそも性格が異なります。

■執行役員の法的地位
 執行役員は、商法上の規定はなく、いわば登記されない「非公式な役員」です。従って、取締役のように株主総会で選任される必要はなく、また逆に、取締役会に参画して意思決定を行うことはできません。
 会社と執行役員との関係は、会社との個別の契約により成り立ち、個々に業務執行を託す形を取ります。
 個別契約は、種類により次の三つのタイプが存在します。
@雇用型−社員がそのまま執行役員に就任する、いうなれば社員の最高の地位としての位置づけによるもの
A契約型−外部の者が社員と同等の個別契約によって執行役員となるもの
B委任型−取締役の兼任によるものや、外部から招聘された専門性の高い者が執行役員となるもの
 上記の契約形態からすると、取締役は契約型となり、会社とは委任関係に入ることになり、原則として社員の身分は残りません。(兼務取締役であれば、例外的に社員身分は残ります。)
 取締役に就任することは、基本的に労働基準法・労災保険法・雇用保険法等からの除外を意味します。同族企業の場合、非同族社員が取締役に就任したからといって、その権限を全うすることは事実上難しく、法的な責任の割には報酬も余り変わらず、責任だけが増幅されてしまうようなケースが見受けられ、少なからず問題を残した状態で運用されているのが現状です。
 その点、雇用型を採用した執行役員は、法的には社員と同様の雇用契約となるため、従来の身分を保持したままで業務執行に当たることができ、これらの問題を回避することができます。非同族社員の立場からすると、この方が好ましい選択といえます。
 雇用型執行役員制度を導入する場合、法的地位が不明確なため、雇用型であることを明確に規程化する必要があります。

■事業承継対策としての利用方法
 中堅・中小企業や医療法人などの場合、代表者が亡くなると、少なからず相続の問題が発生します。
 同族企業の場合、自社株を遺族に分散するのでなく、事業の後継者に一本化しなければ、後々問題を残すことになることと、不動産の含み益や長年の利益の内部留保により純資産が膨れ上がり、自社株の評価が跳ね上がっている可能性があるため、自社株を引き継ぐ後継者が相続税の納税資金問題を抱えることがあります。従って、後継者の納税資金を確保できる程度の退職慰労金・弔慰金を準備しておく必要があります。
 準備すべき額は、世間相場ではなく、自社株の評価等から割り出した相続財産に対する相続税額を基準に考える必要があるため、場合によっては税務署から「過大な退職慰労金」とみなされ、その一部の損金処理を否認されることになるかも知れません。
 しかし、否認の心配以上に、他に売ることのできない自社株を全て相続しなければならない後継者が、個人として納税しなければならない資金の確保を最優先で考えるべきです。
 一部否認を想定して納税準備資金を用意する際には、過大な部分には法人税が課税されることを計算に入れなければいけません。仮に退職慰労金のうち1億円が否認された場合、法人税の実効税率を40%とすると、4000万円の法人税がかかります。従って、法人税を納めた後に残った額が1億円となるような逆算をしなければならず、およそ1億7000万円となります。
 このように、事業承継対策として過大な退職慰労金を用意するためには、他人取締役を含めたかたちで一つの役員退職金規程を運用することは得策ではありません。取締役は同族のみとし、他人は執行役員として完全に退職慰労金の取扱いを分けて運用することが、上手な相続、スムーズな事業承継を実現します。

〔平成16年の当社発行『経営人事レポート』の記事より掲載〕

【平成19年8月16日 記事追加】
 執行役員は特定の部門長などの地位にあり、取締役会の決定に従って業務執行をする責任と権限を有しています。アメリカでは、株主を代表して経営上の意思決定と監督を行う取締役会と、その意思決定に基づいて事業部門などを統率して業務執行を行う執行役員に分かれているのが一般的です。
 日本では、従来から取締役の大半が業務の執行者として部門長を兼務しているケースが多く、その結果、取締役が担当部門の利益を優先したり、取締役の人数が多くなりすぎて、取締役会の意思決定が遅くなりがちとなるといった弊害が生じていました。
 日本ではソニーが始めて導入しましたが、当初日本では執行役員は法的根拠がなかったため、権限や義務が明確ではありませんでした。2002年の商法改正で、執行役という法的根拠のある制度が設立され、権限や責任が明確化されました。
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