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改正解雇ルールをうまく使おう
 就業規則の解雇規定の効力については、学説において限定列挙説と例示列挙説があります。
 限定列挙説は、使用者が労働者を解雇できるのは、就業規則に規定された解雇事由に該当する場合だけであるという説であり、懲戒解雇がこれに当ります。他方、例示列挙説は、あらゆる場合を就業規則に規定することは困難であって就業規則の解雇事由は例示列挙であるという説で、普通解雇がこれに当るとしています。
 今回の労働基準法改正で、就業規則に必ず記載しなければならない事項として「解雇の事由」が加えられました。このため、就業規則に記載のない事由で普通解雇をすれば、解雇事由を就業規則に記載していなかったという労働基準法違反が生じることになり、普通解雇においても今後限定列挙説が有力に取り扱われることになります。
 今まででも、就業規則には解雇事由の規定が存在していたはずですから、大きな変化はないと推察されますが、この機会に、現状の解雇事由が充分なものであるかどうかを改めて検討するようにして下さい。
 また、解雇事由を限定的に全て列挙したつもりでも、実際の事案が発生したときに、該当する記載がないということもあり得ます。そのときのためにも、次のような包括条項を限定列挙の最後尾に設けることが極めて重要な意味を持ちます。・・・「その他前各号に準ずるやむを得ない事情があるとき」
これがあれば、具体的に就業規則に規定していない事由で解雇する場合もあることを規定するものであり、この条項を含めて「解雇の事由」ということになります。

■解雇権濫用法理の新設
 「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と、今回労働基準法に規定されました。では「解雇の客観的合理的理由」とはどういう場合でしょうか。
 まず、労務の提供に関する解雇事由があります。労働契約においては、労務の提供は労働者の基本的な義務ですから、この義務の履行が充分できないことは、解雇の合理的な理由となります。(心身の故障により量的に不充分な労務提供しかできない場合、能力や適性がなくて質的に不充分な労務提供しかできない場合、遅刻欠勤でしばしば労務提供がない場合など)
また、職場規律に違反して企業秩序の維持協力義務を怠った場合や、経歴査証が発覚して信頼関係が破壊され労働契約を維持する基盤自体が失われた場合も、客観的合理的な理由となります。
 いずれにしても、このような理由があるというだけでは足りず、その程度が著しく、かつ企業運営に多大な支障・困難があり、かつ到底雇用を維持し得ない状況に達していることが必要です。
 次に「社会通念上相当であると認められない場合」とは具体的にどういう場合をいうのでしょうか。
 状況的に見て重すぎる処分ではないか、解雇に至るまでの会社の対応や手続きがどのようになされたのかという点が社会的相当性の判断基準になっています。
 たとえていうと、遅刻が多いという理由で解雇する場合でも、改善の見込みはなかったのか、日常的に指導や注意をしてきたのか、いきなりの解雇ではなかったのか、といった点がチェックされます。遅刻の程度がはなはだしく、かつ充分指導をし、かつ譴責等の処分も積み重ねて、もはや改善の余地がないという状況に至って、初めて、解雇も相当だと判断されるということです。

■「ホウレンソウ」ができない社員
 外回りの営業社員がその日の業務報告書を毎日上司へ提出することを命じられているにもかかわらず、1週間もため込んで提出しないような場合、会社としてはどのような対応をすればよいのでしょうか。
 「ホウレンソウ」とは、「報告、連絡、相談」のことを略した言葉ですが、会社における上司・同僚との意思疎通を充分に図り、ひいては会社から社員に対する指揮命令系統を充分に確立する上で非常に重要な仕事であり、社員が徹底すべき基本業務となっています。この営業社員が「ホウレンソウ」を怠ることで、会社としては売上管理の面や労働時間管理の面などにおいて不都合を生じることになります。
 そこで、まず上司としては、この社員に対して報告を蜜に行うよう指導を徹底する必要があります。(また、そうすることが管理者としての責務でもあります。) 指導する際には、必ず、その都度事実確認を行い、確認した事実を指導記録というかたちで文書化して“見える”かたちにして下さい。
 指導にもかかわらず改善が見られない場合は、2回目から、違反事実を確認させることと、今後違反しない旨の誓約させることを自筆の文書で提出させ、“見える”かたちにして下さい。よくいう始末書がこれに該当し、軽い懲戒処分の譴責処分となります。
就業規則の懲戒事由として、たとえば「勤務に関する手続きを怠ったとき」とか「職務怠慢と認められるとき」等が記載されているなら、今回の件で始末書を求めることができます。
就業規則が公平に適用されていることを各社員に“見える”かたちにするために、このような軽い懲戒処分を3〜5回行ってから、徐々に重い処分に移行するプロセスを取ります。
 その後、警告書(イエローカード)を切って執行猶予を与えたのち、最後に退場勧告(レッドカード発行)して下さい。

〔平成16年の当社発行『経営人事レポート』の記事より掲載〕

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