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「残業は諸悪の根源」という人もいます。残業は労働者にとって身体的、精神的な負担となるだけでなく、会社にとっても残業による割増賃金はより大きなコスト要因となり経営の圧迫にもなりかねません。
また労働基準法36条、37条では法定時間以上就労させた場合には時間外割増賃金(普通残業=125%、深夜残業=150%、休日残業=135%)を支払わなければならないことになっていますが、実際には法定時間以上就労していても、その時間以下の割増賃金しか支払わない、もしくは全く支払わない、という状況いわゆるサービス残業が増加、社会問題となっています。
サービス残業問題はすべてとはいえませんが、大部分がホワイトカラーの業務に関するものだといわれています。ではなぜホワイトカラーに多く、またこのような措置は違法にもかかわらずなかなか改善されないのでしょうか。おそらくホワイトカラーの業務は「労働時間」と「仕事の成果」とを関連づけることが難しく、違法と知りつつも各会社で正確に管理、改善できないのが現状だと思われます。
しかし、最近厚生労働省はこのサービス残業に対する規制を強め、実際摘発される会社が相次いでいます。摘発され何十億円の残業代支払い命令及び幹部が書類送検、逮捕というケースもありました。また社員、元社員からの告発も増えています。特に元社員は失うものがありませんからストレートに行動してきます。こうしたことから、今後会社としては、危機管理の一貫として、否応なしに残業対策に取り組まざるをえない状況に直面しています。
■ホワイトカラーの労働時間
「労働時間」と「仕事の成果」との関係に着目すると、ブルーカラー(製造業など)の場合には生産設備が稼動している間はそれだけ成果(生産量)が増しています。つまり「労働時間」と「仕事の成果」がほぼ比例しています。反対に、ホワイトカラーの「仕事の成果」は必ずしも「労働時間」に比例していません。長時間頭を悩ませていても、いいアイデアが出るとは限らず、逆にフッとひらめいて、アッという間にいい企画ができあがるということもあり得るからです。
時間外割増賃金制度は労働者の健康を考え長時間労働を規制し、それに対し労働者に補償を行うものですが、制定当時の昭和22年はブルーカラーを主な対象としており、労働時間と仕事の成果、会社への貢献は比例していると考えられていました。しかし、現在、ホワイトカラーにおいてはこの考え方はあてはまりません。結果として企画案を考えることができず、会社に対して貢献しなかった無駄な時間であっても、この考え方では時間外割増賃金を支払わなければいけないことになります。これでは、会社にとって時間外割増賃金を支払う原資がないのに、割増賃金だけ支払うことになります。
一方、ホワイトカラーにとっても、仕事のことを考えている時間が労働時間だとすると、場合によっては一日中仕事から解放されないともいえます。ブルーカラーは、職場から一歩外へ出ると、基本的には仕事から解放されます。しかし、ホワイトカラーは、仕事を離れても企画を立て、文書を作成し、そのために思考を巡らせます。その場所は家庭かもしれないし、休日を割いているかも知れません。反対に、深夜まで会社にいたとしても、仮眠をとったり、食事をしている時間もあるかもしれません。従って、ホワイトカラーが実際に、どの時間「労働」しているのかを外部から客観的に測定することは、きわめて難しいといえます。
■裁量労働制の導入について
以上のような問題意識もあって、労働基準法に裁量労働制という制度が盛り込まれました。
裁量労働制とは、業務の遂行方法や労働時間管理を労働者本人の「裁量」に任せ、その代わり何時間働いても一定時間労働したものと「みなす」としたものです。フレックスタイム制と違って、所定労働時間の枠さえ取り払って「自由勤務」とするものであり、いわば毎月の給料を「働いた時間」ではなく、「会社に対して貢献した成果」で決めようという制度です。つまり「○時間働いたものとみなす」というわけですから、実際に働いた時間に対応する時間外割増賃金を支払う必要はありませんし、また遅刻・早退などで給与を減額されることもありません。
このように、ホワイトカラーに適した制度ともいえる裁量労働制は、賃金を労働時間から切り離し、仕事の成果と結びつけるものであり、会社と労働者双方に利益をもたらしますが、制度を導入するにはいくつか留意する点があります。まず、対象となる業務はホワイトカラーの業務すべてではなく、専門的な業務、企画、立案、調査、分析の業務などに限定されます。また、対象業務だとしても、今まで20時間も30時間も残業があった労働者や部門に対し、いきなり「裁量労働制を導入したので、今月から時間外割増賃金はゼロ」というわけにはいきません。導入に際しては、経過的措置や時間外割増賃金の代わりに何らかの手当てや報酬を支給する必要があります。そして一番需要なことは、当たり前のことですが労働者に十分な「裁量権」を与えることです。制度を導入したので時間外割増賃金は支払わないが、残業は強要するでは、もちろん違法であり、結果的にサービス残業と同じことになります。会社は制度の趣旨を十分に理解し、慎重に活用することがこの制度の恩恵にあずかるポイントとなります。
〔平成16年の当社発行『経営人事レポート』の記事より掲載〕
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