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営業社員は、毎日の業務を会社の外で行うため、会社は労働時間の管理はできず、社員自身に労働時間の裁量権を与えている会社がほとんどです。たとえば、営業社員が取引先A、B、C・・・を訪問する場合、その日にどの順序で訪問をするのか、各会社にどれくらいの時間を使うのか、いつ休憩するのかなどについては、営業社員自身の判断で行動をしているのが普通です。
営業職のように事業場外で業務に従事している場合は、労働時間の把握が非常に難しいので、労働基準法では、このような場合に対処するため、「事業場外労働のみなし労働時間制」を設けています(同法第38条の2)。この制度は、労働者が労働時間の全部又は一部を事業場外で労働した場合において、労働時間を算定することが困難なときは、原則として「所定労働時間労働したものとみなす」というものです。つまり、実際に働いた時間にかかわらず、就業規則等において定められた時間(所定労働時間)を労働時間として算定するというものです。
しかし、この「事業外労働のみなし労働時間制」は、所定労働時間が法定労働時間(8時間)を超えた場合は、超えた時間の残業手当を支払わなければなりませんが、営業社員の残業時間は、所定労働時間と同様に非常に把握しにくいため、残業手当を計算することが非常に難しいです。そのため、毎月の残業時間を一定時間働いたものと定め、その時間から残業手当を算出し「営業手当」として支払うことが認められています。この「事業場外労働のみなし労働時間制」と「営業手当」の二つを効率よく導入すれば営業社員の労働時間管理の簡素化を進めることができます。
■「営業手当」のメリット・デメリット
「残業手当」を「営業手当」として支給するためには、「営業手当」を何時間残業労働したものとして算定するのかが大きな問題となります。
みなし労働時間制に「実際に働いた時間にかかわらず、就業時間に定められた時間を労働したものとする。」という内容が記載されています。この「定められた時間を労働したものとする。」については、労使協定で定める場合を除いて、会社が算定することであり、就業規則に「営業手当」が「残業手当」であることを明示しなけれなりません。
しかし、残業時間が把握できないためにみなし労働時間制を使うわけですから会社が算定することとしても適正な残業時間を算出することはできません。
「営業手当」の支給金額を増やせば算定対象となる残業時間も増えますが、それでは人件費が増加し、会社の財政を圧迫しかねません。また、社員によって残業単価が違うため、定額で「営業手当」を定める算定対象時間が変わります。これらの問題を解決するためには、残業単価をうまく調整することが大きな問題となります。残業単価は、基本給・役職給・職能給など毎月固定で支払われる給料から算出されます。そのため、残業単価を算出するための毎月固定で支給する手当を低く抑えることができれば残業単価も低くなり、算定対象となる残業時間も多くなります。
「営業手当」の算定対象となる残業時間を多くするために毎月固定で支払われる手当を減らし、減らした金額を営業手当に移すことができれば、給料の支給総額を変更することなく「営業手当」の算定対象となる残業時間を増やすことが可能です。
「営業手当」の算定対象となる残業時間を調整する際には、給与規程の全体のバランスをよく考えたうえで、導入に移らないと、単に給与規程の不利益変更として見られかねません。
■「みなし労働」の適用要件は
営業社員の事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのは、
@労働者が労働時間の全部又は一部を事業場外で労働した場合
A会社の指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難な場合
です。そのため、事業場外で労働した場合であっても、会社からの具体的な指揮監督が及ぶ場合には、労働時間の算定が可能であり、みなし労働時間制の対象とはなりません。これについて、次のような場合には適用がないとされています(労働省通達昭和63.1.1基発第1号)。
@何人かのグループで事業場外の業務に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
A事業場外で労働する場合、携帯電話等によって随時会社からの指示を受けながら労働している場合
B事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けたのち、事業場外で指示どおりに労働し、その後事業場にもどる場合
また、携帯電話を持たせられている場合ですが、会社が定期的に連絡を義務づけたり、随時指示をしたりして業務の進捗状況を把握できるようであるならば、労働時間の算定は可能であり、この制度の適用はないと考えられます。
これらの内容を判断し、「事業場外労働のみなし労働時間制」を導入することができれば、営業社員の労務管理の大幅な簡素化が図れます。しかし、働いても働かなくても「営業手当」として残業手当が支給されるので、毎月の人件費の安定化を進める反面、無駄に「営業手当」を支給することも考えられます。制度導入の際には、営業社員の労働時間管理を徹底する必要があります。
〔平成16年の当社発行『経営人事レポート』の記事より掲載〕
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